ホウオウゴケの好む環境と育て方 水中でも育つ魅力的な苔

2019年10月12日

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ホウオウゴケ

ホウオウゴケの仲間は日本国内だけでも40種以上が知られており、ホウオウゴケの仲間全てを肉眼で識別することは難しいですが、外見的特徴からホウオウゴケの仲間であることを識別することは容易なはずです。

ホウオウゴケの特徴と好む環境

ホウオウゴケは、マゴケ綱シッポゴケ目ホウオウゴケ科に分類されるコケ植物で、その名は伝説上の鳥である鳳凰の羽根を思わせる葉の並び方に由来しています。

左右に規則正しく並んだ葉が一枚の羽根のように見えることから、この美しい名前が付けられました。

世界的にはホウオウゴケ科だけでおよそ900種が知られており、そのうち日本国内でも約40種ほどが確認されています。

同じ仲間の中には草丈が1センチに満たないごく小さな種類から、大きく育つと6センチから10センチほどにもなる種類まで、サイズにはかなりの幅があります。

葉の色は濃い緑色をしていて、光沢のある落ち着いた印象を与えてくれます。

茎から左右対称に葉が広がる姿は、群生させることで一層見応えが増し、苔テラリウムや盆栽の下草として愛好家の間で高い人気を集めています。

自生地としての渓流環境

水辺に生えるホウオウゴケ

ホウオウゴケが自然の中で好んで生えているのは、山地や渓流沿いの水が絶えず流れているような場所です。

岩の表面を薄く水が伝い落ちるような、いわゆる水の滴る岩肌や沢のそばの湿った土の上などに多く見られます。

中には岩の傾斜に沿うように垂れ下がって育つ個体もあり、流れる水に洗われながら育つという他のコケにはあまり見られない独特の生態を持っています。

このような場所は年間を通じて湿度が高く保たれ、しかも直射日光が差し込みにくい薄暗い環境であることがほとんどです。

渓流の周囲は木々に覆われていることが多く、木漏れ日程度のやわらかな光しか届かないため、ホウオウゴケは強い光よりもこうした控えめな明るさを好む性質を持つようになったと考えられています。

ホウオウゴケの拡大写真

水中と水上どちらでも育つ性質

ホウオウゴケの大きな特徴のひとつが、陸上だけでなく水中でも生育できるという点です。

この性質のおかげで、テラリウムのような水上での栽培はもちろん、アクアリウムの水草として水槽内に取り入れられることも珍しくありません。

実際に水草を扱う専門店やネットショップでも流通しており、流木や石に活着させて自然な渓流の景観を作り出す素材として重宝されています。

ただし、水中で育てる場合と水上で育てる場合とでは、必要とする管理の手間が変わってきます。

水中では常に水分が供給される反面、光量やCO2濃度、水質といった要素の管理が求められますし、水上では乾燥をいかに防ぐかが最大の課題になります。

どちらの環境でも共通して言えるのは、清らかで澄んだ水質を好むということで、汚れた水や淀んだ環境では調子を崩しやすい傾向があります。

好む温度と光の条件

渓流という涼しい環境を故郷とするだけあって、ホウオウゴケは高温にはあまり強くありません。

夏場の強い日差しや蒸し暑さは大の苦手で、風通しが悪く熱がこもるような場所に置かれると葉が傷んだり黒く変色してしまうことがあります。

反対に、涼しくて薄暗く、湿度の高い環境であれば安定して育ちやすく、日陰に強いという性質も相まって、北向きの窓辺のような光量の少ない室内でも十分に栽培が可能です。

成長のスピードは他のコケと比べても比較的ゆっくりとしています。

急激に大きくなることはない分、環境さえ整えておけば管理の手間はさほどかからず、コケ栽培の初心者でも扱いやすい種類のひとつに数えられています。

ただし成長が緩やかであるがゆえに一度乾燥などのダメージを受けてしまうと回復にも時間がかかりやすい点には注意が必要です。

乾燥に対する弱さ

ホウオウゴケを育てるうえで最も気を配らなければならないのが乾燥対策です。

もともと水が滴るような湿潤な岩場を住みかとしているため、乾いた空気に長時間さらされることに耐性がなく、うっかり乾燥させてしまうと葉が黒っぽく変色し、そのまま枯れてしまうことも少なくありません。

常に湿った状態を保つことが、この苔を健康に保つための最も基本的な条件だと言えます。

一方で、多湿を好むからといってどんな高湿度環境にも適応できるわけではなく、蒸れやすく温度も上がりやすい密閉容器などでは、かえって調子を崩すこともあります。

涼しさと適度な湿度のバランスが取れた環境こそが、ホウオウゴケにとって最も心地よい住みかとなるようです。

ホウオウゴケの拡大写真

ホウオウゴケの育て方と増やし方

ホウオウゴケを育てるにあたっては、まず植え付ける環境をどう整えるかが最初の分かれ道になります。

開放的な苔盆栽のような使い方よりも蓋のついた小瓶や苔テラリウム、アクアテラリウムのように湿度を閉じ込められる容器のほうが、この苔の性質には合っています。

もともと沢沿いの薄暗く湿った場所を好むため、乾いた空気にさらされ続ける開放環境では調子を落としやすく、密閉度の高い容器のほうが安定した生育が見込めます。

用土の選び方と植え付け

用土に関しては、水はけと保水性のバランスが取れたものを選ぶことが大切です。

黒土や赤玉土の小粒、パーライトやピートモスなどを組み合わせて使う方が多く、樹皮培養土を加えるとより通気性が良くなります。

ホウオウゴケは蒸れに弱い性質を持っているため、水はけの悪い重たい土を使うと根元から傷んでしまうことがあります。

土を薄く敷いた上にホウオウゴケを軽く押し付けるだけで植え付けは完了しますが、深く埋め込みすぎないよう注意してください。

仮根は水分や養分を吸収するための器官ではなく、あくまで基質にしがみつくためのものなので、土との密着さえ保てれば自然と定着していきます。

日々の水やりと置き場所

水やりの基本は霧吹きによる葉水です。

一日に一、二回ほど、葉の表面がしっとりする程度に吹きかければ十分で、容器の底に水が溜まるほど与えてしまうと根腐れのような状態を招くことがあります。

底に保水シートやスポンジを敷いておくと容器全体の湿度にムラが出にくくなり管理が安定します。

置き場所については、直射日光の当たらない明るい日陰が基本です。

カーテン越しの柔らかな朝日程度の光量でも十分に育ちますし、北向きの窓辺のような光の弱い場所でも問題なく育てられます。

逆に強い光や高温にさらされると葉が黄色っぽく変色したり、傷んでしまうことがあるため、夏場の窓際などは避けたほうが無難です。

目安として30度を超えるような高温には長時間さらさないよう気をつけてください。

株分けによる増やし方

ホウオウゴケの増やし方としてまず挙げられるのが株分けです。

ある程度まとまって育った株を手で優しくほぐし、小さな塊に分けてから、それぞれを新しい土や基質に植え付けていく方法になります。

株分けは自然な増え方に近いため失敗が少なく、初めて増殖に挑戦する場合でも扱いやすいやり方です。

移植法による増やし方

より積極的に増やしたい場合には、移植法と呼ばれる手法が使われることもあります。

石を水に浸けて空気を抜き、ホウオウゴケを一本ずつ丁寧に分けて水洗いしたのち、葉の先端を一センチほどカットして成長点を止めることで、新しい芽を出やすくする方法です。

カットした苔を石の上に重ならないように並べ、糸などで軽く巻き付けてから、蓋付きの容器や腰水の状態で管理していきます。

より細かく増やしたい場合には、茎を五ミリ程度に刻んで同様に石へ乗せる方法もあり、細かく刻むほど新芽が出る箇所は増えますが、その分それぞれの成長は緩やかになる傾向があります。

増殖に伴う成長スピードの見込み

いずれの方法で増やす場合もホウオウゴケはもともと成長がゆっくりとした苔であることを念頭に置いておく必要があります。

株分けや移植を行ってから目に見えて群生が広がるまでには、数ヶ月単位の時間がかかることも珍しくありません。

焦らずに湿度と適度な明るさを保ち続けることが、結果的に美しい群生を育てる一番の近道になります。

また、大量に増やして庭園などの広い面積に使おうとすると環境の条件がかなり限定されるため難易度が上がります。

小さな容器の中でじっくり育てて楽しむスタイルのほうが、この苔の性質には合っていると言えるでしょう。

ホウオウゴケの水中化

ホウオウゴケの水中化とは、もともと水上で育っている苔を水槽内に沈めて、水中でも生育できる状態に慣らしていく作業のことを指します。

ホウオウゴケは自然界でも渓流の水しぶきがかかる場所や半分水に浸かったような環境に自生していることがあり、他の陸生の苔と比べると水中への適応力がもともと備わっている種類だと言えます。

そのため水中化の作業自体は決して難しいものではなく、コケ植物の中でも比較的スムーズに移行できる部類に入ります。

活着させる下地選びと巻き付け方

水中化を行う際にまず考えたいのが、ホウオウゴケをどこに固定するかという点です。

そのまま水槽の底に沈めておくだけでも枯れてしまうことはありませんが、見た目の美しさや管理のしやすさを考えると溶岩石や流木などに活着させるのが定番のやり方です。

石や流木の表面にホウオウゴケを重ならないように並べ、木綿糸や細めのテグスでほどけないようにぐるぐると巻き付けていきます。

モスコットンのような専用資材を使う方法もありますが、活着までに時間がかかる分、途中で剥がれてしまうことがあるため、糸でしっかり固定しておいたほうが安心です。

活着のスピード自体はウィローモスなどと比べると遅めです。

急いで水槽全体を覆うようなレイアウトを目指す場合には不向きな面もありますが、時間をかけてじっくり育てていく楽しみ方には向いている苔だと言えます。

二酸化炭素添加による活着促進

水中化をよりスムーズに進めたい場合には、二酸化炭素を添加してあげることが効果的です。

CO2が十分に供給されている環境では活着のスピードが目に見えて早まり、新芽も出やすくなります。

早ければ一ヶ月ほどで新しい芽が展開し始め、活着が進んでいる様子が確認できるようになります。

二酸化炭素を添加できる設備が整っているのであれば、積極的に活用したほうが結果的に手間も少なく、緑の鮮やかさも維持しやすくなります。

水温と水質面での注意点

ホウオウゴケが自生しているのは年間を通じて涼しい渓流沿いのため、急激に水温の高い環境に入れるとうまく適応できないことがあります。

水中化を始める際は、いきなり高い水温にさらすのではなく、徐々に慣らしていくことが望ましいです。

目安としては26度から27度程度までであれば大きな問題にはなりにくいですが、夏場の水温上昇には特に注意が必要です。

水温が上がりすぎる環境では、活着した後であっても葉が傷んでしまうことがあります。

また、水質に関しても敏感な一面があり、カリウムなどの成分が過剰になると調子を崩して溶けてしまうことがあります。

肥料を添加している水槽で葉の状態が悪化してきた場合は、添加を一旦止めて水換えを行い、様子を見ながら調整していくとよいでしょう。

水上葉と水中葉の違いによる購入時の見極め

市場に出回っているホウオウゴケには、あらかじめ水中で管理された状態で販売されているものと水上で栽培されたものとがあります。

前者はすでに水中葉としての姿に近く、水槽に入れてもそのまま順応しやすい一方、後者は水上葉の状態から改めて水中環境に適応させる必要があるため、変化の過程にやや時間がかかります。

急いで完成したレイアウトを作りたい場合には、水中で管理されていた株を選ぶほうが手間は少なく済みますし、水上葉からの変化を楽しみたいという場合には、あえて水上葉の状態から挑戦してみるのもひとつの方法です。

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