苔の中でもよく知られているスギゴケ・スナゴケ・ゼニゴケ。この3種の苔の違いについて画像付きでご紹介いたします。
また、苔には花が咲くのか?根はあるのか?
そんな素朴な疑問についてもそれぞれのコケの特徴と合わせてご紹介いたします。
スナゴケとスギゴケの違い
スギゴケとスナゴケは苔庭に用いられることの多い苔です。
しかし、スナゴケとスギゴケでは好む環境が全く違く、自然の中でも同じ環境に生えていることはほとんどありません。
スギゴケの仲間は日本では30種ほどが自生しているとされており、全てのスギゴケに対して当てはまることではありませんが、スギゴケは山間部の腐葉土が溜まるような土壌を好み、強い光が当たらない常に空中湿度が保たれた場所でないと上手く育つことができません。
乾燥すると葉がくるくると丸まるタイプや茎に集まるタイプなどがあり、乾燥状態ではあまり見栄えがしないものです。
見た目は名前の由来からもわかるように小さな杉の木のような形をしています。
スギゴケの仲間の中でもウマスギゴケやコスギゴケ、セイタカスギゴケなどがよく知られたスギゴケの仲間でしょう。
スナゴケはスギゴケよりも日当たりが良く乾燥した環境を好み川原などの砂が含まれる土壌などを好みます。
よって育成にあたっても基本の赤玉土に砂を混ぜて排水性を高めると上手く育ちます。
スナゴケの仲間でも山間部で見かけるものもありますが、やはり乾燥した環境を好むため土の上には自生せずに石の上に生えています。
スナゴケはその特徴からも屋上緑化に用いられることもあります。
屋上といえば湿度とはほぼ無縁と思われるような環境のためコケの中でも乾燥に強く、日当たりを好むスナゴケが最適なのです。
スギゴケやスナゴケを苔庭に用いるのであればご自身の庭の湿度環境を測定し、その環境にあった苔を選ぶことをお勧めします。
スギゴケとゼニゴケの違い
スギゴケとゼニゴケは自生環境だけを考えると似た場所で見かけることもあります。
しかし、街中で見かけるゼニゴケの仲間もあるためそれらの種とは棲み分けがされています。
山間部で見かけるゼニゴケの仲間にはジャゴケと呼ばれる種があり、ジャゴケは湿度を好み、沢沿いや土壌が剥き出しになっている林道脇などでよく見かけることがあります。
ゼニゴケの仲間は基本的に土の上に自生しており、倒木や切り株などに生えることはほとんどありません。
倒木や切り株の上は乾燥しやすい環境ですのでゼニゴケには不向きな環境なのでしょう。
スギゴケとゼニゴケはコケ植物の仲間の中でも分類が違うほど違いがあるのでまず見間違えることは無いはずです。
ちなみにスギゴケはマゴケ植物門(以前は蘚類と呼ばれていた)に分類され、ゼニゴケはゼニゴケ植物門(以前は苔類と呼ばれていた)に分類されます。
その中のジャゴケ科にジャゴケが分類されるためゼニゴケとジャゴケは同じような見た目をしています。
スギゴケの花と根
スギゴケは季節によって花のようなものをつける時があるため花と見間違える人もいるようですが、苔には花は咲きません。
コケには雄株と雌株があり、それらが繁殖のために造卵器や造精器をつけることがあり、それらが花のように見えることがあります。
コケの精子は雨風により流され、受精してコケの胞子のうを作り上げます。
そこから胞子が放出され子孫を増やしていきます。
さらに苔には根も存在しません。
苔は葉全体から水分を吸収しながら生長するため根から水分を吸収する必要がないのです。
よってコケの根のように見えるものは仮根と呼ばれ、石や地面などにしがみつくためにあるものです。
ゼニゴケの花
スギゴケ同様にゼニゴケの仲間も花を咲かせることはありません。
ゼニゴケの仲間で見られる花のようなものも胞子体や無性芽器と呼ばれるもので子孫を残すための器官ですので季節的に見られる時期と見られない時期があります。
スギゴケとスナゴケ、ゼニゴケの3種の苔について違いをご紹介してきましたが、見た目の違いはすぐに覚えられるものと思います。
また、それぞれに好む環境が違うため自然の中で苔採取を考えているのであればそれぞれの苔の好む環境を理解しておくと見つけやすいでしょう。
また、苔の自生環境に足を運ぶことで苔の好む環境や生え方など育成にあたって知り得る情報が沢山ありますので機会がありましたら一度苔観察に出かけてみてはいかがでしょうか。
好む環境から考えると一番湿度が高く常に湿った環境を好むのがゼニゴケ、湿度は高めだが、水捌けの良い土壌を好むのがスギゴケ、湿度は低めで日当たりが良くさらに水捌けの良い土壌を好むのがスナゴケとなります。
これだけ3種の苔に違いがあるためこの3種の苔を同じ環境で育てるのはほぼ無理と言えるでしょう。
このように1種の苔について育て方をご紹介しても苔の種類により好む環境が違うためその育て方が適正とは言えないこともあります。
苔は丈夫でどのような環境でも育つと思われがちですが、種類ごとに育成環境の違いがあることは理解しておかなければいけないことかもしれません。