苔とはどのような植物なのか?普通の植物と何が違うのか?
そんな苔の特徴についてご紹介いたします。
庭の片隅にひっそりと生える苔や森の中で他の植物に混ざりながら倒木や岩の上などちょっとしたスペースを間借りするように生える苔。
これら苔にはその他の植物とは違う苔特有の大きな特徴があり、その特徴を理解しておくことは苔を元気に育てるためのコツかもしれません。
苔とはどのような植物?
まず、はじめに苔という言葉を聞いてみなさんはどのようなイメージを浮かべるでしょうか?
苔庭のようなホッとする空間を思い浮かべるでしょうか?
それとも、そのような素敵なイメージとは逆に薄暗い湿った地面や石垣にへばりつくように生えている小さな植物、あるいは植えた覚えもないのに勝手に生えてくる厄介者というイメージでしょうか?
苔に対する好ましくない印象が示すような、湿った場所を好むものが多いこと、そして体が小さいこと、知らない間に増えてくることは、苔の本質をよく言い当てています。
というのも、これらの性質は全て、コケ植物が最も原始的な陸上植物であることの現れだからです。
苔植物には維管束や根がない!
コケ植物の体の作りを見てみると、他の植物と同じように緑色をしていて、茎と葉があり、一見しただけではシダ植物との違いはあまり大きくないように思えますが、コケ植物には根がありません。
引っ張ってみると根の有無はすぐにわかり、コケ植物はなんの抵抗もなしに地面から抜けるからです。
スギゴケなどでは地面の下を這う根に似たものがありますが、それは茎が変形したもので、シダ植物の根茎と同じです。
水を地面から吸い上げるための根を持たないこと以外にも、コケ植物には備わっていない特徴があります。
水や栄養を運ぶための維管束を持たないこと、体内からの水分の蒸散を防ぐためのクチクラ層が発達していないことです。
維管束は固い細胞から出来ていますので、水からの浮力と決別した陸上植物では、あたかも動物の骨のように重力に抵抗して自分の体を支える上でも維管束の果たす役割はとても大きなものがあります。
こういった特徴は、厳しい陸上環境の中で生きてゆくために、緑藻類の祖先からコケ植物、シダ植物、裸子植物そして被子植物と段階を経て進化を遂げてゆく中で徐々に獲得されてきたものです。
そしてコケ植物というのは、根、維管束そしてクチクラ層がまだ発達していない段階の植物なので、その意味で最も原始的な陸上植物と言われるのです。
高等植物のような機能が備わっていない苔植物はその他の植物と比べ劣っているのかと言えばそうではありません。
多くの植物と違った機能を持ち合わせることにより、苔は様々な環境に適応し、生き抜いてきたのです。
苔の進化が止まったわけではなく、苔独自の進化を遂げた結果が今の苔の姿なのかもしれません。
土が無いような場所でも育つ。水分が不足すれば仮眠状態に入り生き抜くことが出来る。
空気中の微量な栄養素を取り込み生長することができるなど苔には苔特有の優れた能力が備わっているのです。