ゼニゴケの見た目が変わっているのはなぜ?他のコケとは違う決定的な特徴

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ゼニゴケの見た目が変わっているのはなぜ?他のコケとは違う決定的な特徴

コケと聞くと多くの人が苔庭に広がるスギゴケのような小さな葉と茎を持つふさふさとした植物を思い浮かべるのではないでしょうか。

ところがゼニゴケはそういったイメージとはまるで異なり、地面にぺったりと張り付いた平べったい緑色のかたまりのように見えます。

この独特な姿には、植物学的にきちんとした理由があります。

葉状体という体のつくり

ゼニゴケの最も際立った特徴は、茎と葉の区別がなく、植物体全体が「葉状体」と呼ばれる平らな構造になっている点です。

スギゴケのように茎があって、そこから葉が出ているという構造をまったく持ちません。

体全体が一枚の葉のように地面をはうように広がっており、これがあの独特な見た目の根本的な理由です。

葉状体の長さは3センチから10センチほどで表面に鱗状の模様があり、二叉分岐を繰り返すことで成長します。

葉状体の頂端部は心臓型に湾入しており、その付近が細胞分裂の活発な分裂組織となっています。

この二股状に分かれながら広がっていく様子は、他のコケ類ではなかなか見られない独特の成長パターンです。

気室と気室孔という精巧な構造

表面をよく観察すると六角形を連ねたような細かなタイル模様が見えます。

これは内部の構造が表面に透けて見えているもので、背面の表皮の直下には気室が発達しており、内部に葉緑体を含み、気室孔によって外界に通じています。

この気室の存在が、ゼニゴケを他の苔類と大きく隔てる内部構造上の特徴のひとつです。

気室孔は樽形をしており、底の細胞はT字形という精巧な形状をしています。

これはガス交換を行うための仕組みであり、維管束を持たないコケ植物でありながら、光合成を効率よく行うための工夫が体の内部に埋め込まれているわけです。

高等植物の気孔に相当する役割を担っているとも言えます。

腹面の構造と仮根

葉状体の腹面側には、赤色の腹鱗片と褐色の仮根が分化しています。

仮根は地面への固着に用いられます。

上から見ると緑一色のように見えるゼニゴケも裏返すと赤紫色の鱗片が並んだ全く異なる顔を持っています。

腹鱗片は紫色で腹全面に6列あり、最も内側の1列は線形、2列目が歪んだ三日月形で最大となります。

このような腹面の複雑な構造もコケ植物のなかでも苔類に特有のものです。

杯状体という不思議な器官

葉状体の表面をよく見ると縁が波打った小さなお椀のような構造が点在しているのに気づきます。

これが「杯状体」と呼ばれる器官で、杯状体からは両側がくぼんだ円盤状の無性芽が形成され、周辺にばらまかれて無性的に繁殖します。

無性芽は単一の細胞を起源としており、クローンとして増殖することができます。

これがゼニゴケが庭にあっという間にはびこる効率的な手段となっています。

雨粒が杯状体に当たるとその衝撃で無性芽が飛び散り、着地した先で新しい個体として成長するという巧みな仕組みです。

雄器托と雌器托という生殖構造

繁殖期になると葉状体の先端から長い柄が伸び、その先に独特な形の傘状の構造が現れます。

ゼニゴケは雌雄異株であり、雄株は円盤状の雄器托をもち、雌株は深裂した傘状の雌器托を持ちます。

雌器床は8から10深裂し、破れ傘のように見えます。

この傘の下に造器があり、胞子体から胞子を出します。

胞子を出す時期には傘が上にもちあがります。

雄器托がフライパンのような円盤形であるのに対し、雌器托がまるで古い傘が破れたような形をしているのは、受精のための構造的な必然から生まれた形です。

雨が降ると雄器托の表面から精子が流れ落ち、水を伝って雌器托へたどり着くという受精の仕組みにこの形が深く関わっています。

苔類としての進化的な位置づけ

これらの形態的な特徴は、ゼニゴケが属する「苔類」という分類群そのものの特性でもあります。

コケ植物は苔類、蘚類、ツノゴケ類の3群からなる総称であり、ゼニゴケは苔類に属します。

化石の記録からは苔類がもっとも初期に分岐したのではないかとも言われており、陸上植物の中でも特に原始的な系統に位置する植物です。

スギゴケのような蘚類が茎と葉に似た構造を発達させているのに対し、ゼニゴケを含む苔類は葉状体という形で陸上生活を切り開いてきたグループであり、その姿の違いは単なる見た目の差ではなく、植物の進化の歴史そのものを反映しているのです。

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