
苔とカビの違いと見分け方とは?
苔やカビは人に害を与える?
苔とカビの駆除方法は同じ?
こんな苔とカビの違いに関する疑問についてご紹介いたします。
苔とカビの違いと見分け方とは?
苔とカビはどちらも湿った場所に現れ、緑や黒のまだら模様を作るため、遠目にはそっくり見えます。
しかし生物としてはまったく別物であり、見分けるポイントは意外にたくさんあります。
ここでは日常で確実に判別できる方法を、順を追って説明していきます。
生物学的な分類の違い
苔は植物です。
シダ植物や種子植物の仲間ではなく、独立した苔植物門に属しますが、れっきとした光合成を行う緑色植物です。
葉緑体を持ち、太陽の光をエネルギー源に二酸化炭素と水からデンプンを作ります。
一方、カビは真菌、つまりキノコや酵母と同じ菌類です。
光合成は一切行わず、生きているものや死んだ有機物を分解して栄養にします。
植物ではなく、動物に近い存在だと考えるとわかりやすいでしょう。
生え方の違い
苔は地面や石、木の表面にしっかりと根を張ります。
正確には「仮根」と呼ばれる吸盤のような構造ですが、かなり強固にくっつきます。
一度生えると簡単には剥がれません。
厚みもあり、数ミリから数センチのクッション状になります。
カビは基本的に表面に張り付くだけです。
根を張らず、菌糸を少し伸ばして栄養を吸いますが、物理的な接着力は弱いことが多いです。
指でこするとポロポロ剥がれたり、拭き取れたりします。
色の特徴
苔の色は自然な緑です。
鮮やかなエメラルドグリーンから深緑、枯れ気味の黄緑まで、植物らしい色合いです。
光が当たると明らかに緑が濃く見え、日陰では落ち着いた色になります。
まれに赤褐色や黄金色の苔もありますが、いずれも植物らしい艶があります。
カビは不自然な色が多いです。
真っ白、黒、青緑、橙色、ピンクなど、植物ではまず見ない色が特徴的です。
特に黒カビは炭のように真っ黒で、光の当たり方で艶が出ません。
青カビは金属的な青緑を帯びることがあります。
触感と厚みの違い
これが一番わかりやすい判別法です。
苔は触るとふわふわ、またはしっとりとした弾力があります。
絨毯やスポンジを軽く押したような感触で、指を離すとゆっくり元に戻ります。
苔とは違いカビはペタッと薄く、粉っぽいかネバっとしています。
厚みは紙一枚程度のことが多く、押しても弾力はありません。
黒カビは乾燥するとカサカサになり、湿っているとヌルヌルしますが、どちらにしても厚みは感じられません。
発生する場所の傾向
苔は光が必要で、完全な暗闇では生きられません。
北側の壁や木陰でも、わずかな散光があれば生えます。
コンクリート、天然石、樹皮、古い瓦など、無機質でも平気で生えます。
カビは光がなくても増殖できます。
押入れの中、エアコンの内部、冷蔵庫のゴムパッキンなど、完全に暗い場所にも発生します。
塗装された壁、ビニールクロス、プラスチックなど、少しでも有機物を含む素材を好みます。
成長速度と季節性
苔はゆっくり育ちます。
数週間で目に見えるコロニーを作ることは稀で、年単位で広がっていきます。
冬でも枯れずに緑を保つ種類が多く、季節による変化は少ないです。
カビは条件が揃うと爆発的に増えます。
梅雨時や結露が起きる秋口に、一週間で壁一面を覆うことも珍しくありません。
乾燥すると活動を止め、また湿ると復活する、ということを繰り返します。
匂いの違い
苔はほぼ無臭です。
雨上がりに森の土のような清々しい香りがすることがありますが、鼻を近づけても強くは感じません。
カビは独特のカビ臭さがあります。
古い本の匂い、押入れのムッとした臭い、湿ったタオルの嫌な匂い、これらがカビ特有の臭いです。
鼻を近づけるとすぐにわかります。
これらのポイントを一つでも確認できれば、ほぼ確実に苔かカビかを見分けることができます。
特に触感と厚み、そして色味の自然さ、この三つを押さえておけばまず間違えることはありません。
苔やカビは人に害を与える?
苔とカビは見た目が似ていても人体への影響はまったく異なります。
苔はほぼ無害であるのに対し、カビは種類や環境によっては深刻な健康被害を引き起こすことがあります。
ここではその違いを具体的に見ていきましょう。
苔が人体に及ぼす影響
日本の庭や神社、森林に普通に生えている苔は、人に対して毒性を持つものはほとんどありません。
スギゴケ、ホソバオキナゴケ、ハイゴケなど、一般的な種類はいずれも安全です。
まれに苔の胞子を大量に吸い込むと、くしゃみや目のかゆみを起こす人がいます。
これは花粉症と同じアレルギー反応にすぎません。
皮膚に触れてもかぶれることはなく、小さい子どもが口に入れても問題になる報告はほぼありません。
海外の一部の熱帯地方には、青酸配糖体を含む毒苔が存在すると言われますが、日本国内ではそのような種類は見られません。
庭やベランダに生える苔を気にする必要はまずないと考えて大丈夫です。
カビが引き起こす健康被害の種類
カビは種類が数万種もあり、その中で人体に影響を与えるものは少なくありません。
大きく分けて三つの害があります。
まずアレルギー症状です。
カビの胞子や菌糸の破片を吸い込むと鼻水、くしゃみ、咳、目のかゆみが出ます。
ひどくなるとアレルギー性鼻炎や気管支炎に移行し、喘息を悪化させることも珍しくありません。
次に感染症です。
普段は健康な人には問題ないカビでも免疫力が著しく低下しているときには体内に侵入します。
特にアスペルギルス属のカビは、肺の中に巣を作って肺アスペルギルス症を引き起こします。
これは抗真菌薬で長期間治療が必要な病気です。
そして最も深刻なのがカビ毒、マイコトキシンです。
一部のカビは強力な毒素を産生します。
代表的なものがアフラトキシンで、肝臓がんの原因になることが世界保健機関でも認められています。
幸い日本でよく見る黒カビがこれを作ることは稀ですが、輸入穀物やナッツに混入して食中毒を起こした事例はあります。
日常生活で特に注意すべきカビ
お風呂や洗濯機、壁にできる黒カビは、主にクラドスポリウム属やアルタナリア属です。
これらは強い毒性はありませんが、長期間大量に吸い続けると気道が過敏になり、咳や頭痛、倦怠感を引き起こします。
子どもや高齢者は特に影響を受けやすいと言われます。
エアコン内部に発生するカビは、運転するたびに部屋中に胞子を撒き散らします。
夏にエアコンをつけると咳が出る人は、このカビが原因のことが少なくありません。
古い木造家屋の床下や押入れに発生する白色~灰色のカビの中には、トリコテセン系毒素を産生するものがあります。
これに長期間さらされると、皮膚炎や吐き気、免疫力低下が報告されています。
湿気た畳にできる赤やピンクのカビ(フザリウム属)は、毒性が比較的強い種類です。
子どもが畳の上で遊んでいるときに口に入れると、嘔吐や下痢を起こすことがあります。
どれくらいの量で害が出るのか
苔はどんなに大量に触れても問題になることはほぼありません。
カビは発生している面積と期間が重要です。
例えば浴室の壁に数平方センチの黒カビがある程度なら、健康な人には影響はほとんどありません。
しかし十平方メートル以上の壁や天井が黒く染まり、数年間放置されているような場合は、明らかに健康リスクが高まります。
子ども部屋や寝室にカビが発生している場合は、たとえ小さな面積でも早めに対処した方が賢明です。
睡眠中に何時間も胞子を吸い続けることになるからです。
ペットへの影響も無視できません。
特に犬や猫は人間より鼻が敏感で、カビによる呼吸器症状を起こしやすいと言われます。
結論として、苔は安心して眺めていられる存在ですが、カビは種類と量によっては明確に人体に害を与えるものです。
特に閉鎖された室内で発生したカビは、見た目以上に注意が必要です。
苔とカビの駆除方法は同じ?
苔とカビはどちらも湿気を好むため、発生する場所が重なることが多いのですが、生き物の性質が根本的に違うため、駆除の方法も大きく異なります。
同じ薬剤や道具を使っても効果が薄いどころか、逆に悪化させることもあります。
ここではそれぞれに適した除去と再発防止の方法を詳しく見ていきます。
苔を効果的に取り除く方法
苔は植物ですから、光合成を止める薬剤が最も効果的です。
市販されている苔専用枯殺剤には、通常ペルメトリンやグルホシネート、MCPBなどの除草剤成分が含まれています。
これを規定倍率に薄めてスプレーすると、葉緑体が壊れて一週間ほどで茶色く枯れます。
枯れた後は必ず物理的に剥がしてください。
高圧洗浄機を使うのが最も効率的で、コンクリートや石の表面なら一気にきれいになります。
高圧洗浄機がない場合は、硬めのデッキブラシや金属ヘラで削ぎ落とす方法もあります。
苔は仮根でしっかりくっついていますから、表面だけ拭いてもすぐに再生します。
屋根瓦や墓石に生えた苔は、薬剤を散布した後、数日置いてから水で流すだけで落ちやすくなります。
瓦を傷めないよう、低圧の洗浄機やホースで優しく流すのがコツです。
カビを確実に除去する方法
カビは菌類ですから、塩素系漂白剤やカビ取り剤が最も強力に効きます。
浴室用のカビキラーやキッチンハイターを直接スプレーし、十分に放置してから洗い流すと、表面のカビはほぼ完全に死滅します。
ただし黒カビの色素は漂白されますが、死骸や胞子は残りますから、しっかり水で流すことが大切です。
塗装壁やビニールクロスに生えたカビは、エタノール(消毒用アルコール)が有効です。
塩素系を使うと壁紙が変色する恐れがあるため、濃度70~80%のエタノールをスプレーして拭き取ります。
エタノールは瞬時に蒸発するため、残留しにくい利点もあります。
木材や畳に染み込んだカビは、表面だけの処理では再発します。
こういう場合は、カビ取り剤を塗布した後、ヘラで削ぎ取り、さらにサンドペーパーで表面を薄く削る必要があります。
畳の場合は裏返して干し、表側を専用の畳用カビ取り剤で処理すると効果的です。
薬剤が使えない場所での対処
観葉植物の鉢や石庭など、薬剤をまけない場所に生えた苔は、重曹水が有効です。
重曹を水で溶かしてスプレーすると、アルカリ性で苔が弱り、数日後にブラシで簡単に剥がれます。
ただし効果は穏やかですから、根気よく数回繰り返す必要があります。
食品近くや赤ちゃんのいる部屋のカビには、食酢やクエン酸が使えます。
酢をそのままスプレーすると、カビの増殖をかなり抑えられます。
匂いが気になる場合は、クエン酸水を作って拭き、その後に水拭きをしてください。
再発を防ぐための環境整備
苔もカビも湿気がなければ生きられません。
まず風通しと日当たりを確保することが最も大切です。
屋外の苔の場合は、木の枝を剪定して日光を入れ、地面に砂利を敷いて水はけを良くします。
コンクリートの打ちっぱなし部分には、透湿防水塗料を塗ると苔が生えにくくなります。
室内のカビ対策では、換気が基本です。
浴室は使用後に必ず換気扇を回し、ドアを開けて湿気を外に出します。
押入れやクローゼットには除湿剤や除湿機を常備し、湿度を50%以下に保つとカビはほとんど発生しません。
エアコン内部のカビは、シーズンオフに専門業者による洗浄を依頼するのが確実です。
自分でやる場合は、市販のエアコン洗浄スプレーを使いますが、フィンに液が残らないよう注意深く作業してください。
道具と薬剤の使い分けが鍵
結局のところ、苔には植物を枯らす薬剤と物理的な剥ぎ取り、カビには殺菌力の強い漂白剤と拭き取りが基本です。
間違ってカビキラーを苔にかけてもほとんど枯れませんし、逆に苔枯らし剤を室内のカビに使っても効果は薄いです。
正しい敵に正しい武器を使うことで、手間も費用も半分以下に抑えられ、しかもきれいが長持ちします。
発生場所と状態をよく観察し、苔かカビかを正しく見極めた上で対処することが、何よりの近道なのです。