
大切に手入れしてきた苔盆栽にある朝、白いふわふわしたものが付いている。そんな経験をされた方は少なくないと思います。
そのような状況を見つけた瞬間はどきっとしますが、まずは慌てず状況をよく確認することが肝心です。
苔盆栽や苔玉に発生する白い綿状・糸クズ状のものは、クモノスカビである可能性が高いです。
空気中には常に無数のカビの胞子が漂っており、水分があって空気の動きの少ない場所に着床することで発生します。
また、白や茶色のふわふわしたものが見えても実はカビではなく苔の仮根であるケースも多くあります。
苔の仮根は土の中だけでなく、茎の途中や葉からも発生することがあり、種類によって白や茶色のものもあるため、カビと見間違えることがあります。
よく観察して、菌糸が広がるように伸びているかどうかを確かめてみましょう。
カビが発生しているサインとしては、ホコリとは明らかに異なる白いフワフワとしたものや、斑点状にポツポツと茶色くなっている部分が挙げられます。
そのまま放置すると苔がどんどん枯れていってしまうので、早期発見・早期対処が重要です。
カビが発生する主な原因
カビは湿度が高く風通しの悪い場所を好んで生える傾向があり、また太陽の光を嫌う性質があるため、日当たりの悪さも発生原因のひとつです。
室内インテリアとして飾っている苔盆栽にカビが生えやすいのはそのためです。
自然の中で採取した苔にはゴミが多く付いており、苔の中に小さな虫が住んでいることもあります。
そのような虫もカビの原因となるため注意が必要です。
また、テラリウムのレイアウトに使う流木などの天然素材はカビが発生する原因物質となります。
鉱石や岩石、プラスチック製のものは問題ありませんが、流木や枝、木製のものは自然下でも腐って分解されるため、カビの発生源になりやすいです。
素材として使う苔や砂、石などに土が付着しているとそれらの有機物からカビが発生する場合が多く、山から採取してきた状態で洗浄も下処理もしないまま使用していると半年から1年ほどで土に含まれる有機物が自然分解される過程でカビが発生しやすくなります。
さらに苔の傷んだ葉や胞子体をそのままにしておくこともカビの発生原因となります。
元気な苔にはカビを寄せ付けない抗菌能力がありますが、傷んだ部分はカビが取りつきやすい状態です。
体力が落ちているときに人が風邪を引きやすくなるのと同じ理屈で、苔が弱ってしまったときにカビが生えやすくなります。
カビは有機物が多いと繁殖の勢いを増すため、苔玉や苔盆栽に液肥を与えると問題が起こりやすくなります。
また、受皿に常に水が溜まっているような状態にしておくと苔の下の方から腐ってしまうこともあります。
苔玉に使用している苔は高等植物と違い根を持たないため、底面給水のように水を張っておく必要はありません。
カビが生えたときの除去方法
発生初期の対処
カビも発生初期であれば駆除することが可能です。
少量であれば綿棒などで丁寧に取り除きましょう。
定期的に観察して、早めに対処することが大切です。
こすって取り除いても表面上は一時的にきれいになったように見えますが菌糸が残ってしまいます。
苔に白いカビの発生を確認したときは木酢液を水でかなり薄め、ガーゼやティッシュに少量含めて取り除くようにしましょう。
食用のお酢でも代用できますが、寿司酢や糖分の入っているお酢は避けてください。
また、木酢液は苔に悪い影響を与えるため、できるかぎり苔に付けないよう慎重にカビ部分を撫でるように取り除くことが大切です。
広範囲に広がっているときの対処
カビが広範囲に発生してしまったときは、カビが取り付いている部分の苔を取り出し、よく水洗いしてください。
綺麗に洗い落としたら、雑巾などで水分を取り除きます。
苔をよく見て茶色い部分があったらハサミでカットして取り除き、古い土は処分して新しい土で植え直します。
容器を使用している場合は、レイアウト資材を全て取り出して洗い流し、直射日光に当てて乾燥させます。
ソイルなどは新しいものに入れ替えましょう。
苔を取り出して約1週間乾燥させた後、しっかり水を与えてから再利用します。
殺菌剤の正しい使い方
カビが繁茂しているところに直接薬剤をかけても効き目が低いため、まずカビを物理的に除去してから使用します。
エアゾールタイプの薬剤は近くから直接かけると苔が傷むためNGです。
アルコール除菌も苔まで枯れてしまうため使用を避けましょう。
家庭園芸用のもので、うどん粉病などに効果があるベンレートやトップジンMなどが有効です。
特にひどく発生してしまったときは、違う種類の薬剤を2週に分けて使用するとより効果を発揮します。
殺菌剤を使用する場合は苔が弱っている真夏の暑い時期は避け、苔が乾燥しているときや暑い時間帯も使用しないようにしましょう。
薬害が出て苔が傷む危険性があります。
殺菌剤・殺虫剤を植物にかけるときは、早朝か夜に温度が下がってからが基本です。
ヒバという木から生成されたヒバオイルには、ヒノキチオールという成分が含まれており、苔との相性が良く育成を促進する効果があるうえ、抗菌効果もあるのでカビ対策にも有効です。
カビを予防するための管理のポイント
置き場所と風通しの改善
カビを発生させにくくするためには、外気に当てること、日光に当てること、少し乾燥気味にする時間を作ることの3点が大切です。
苔玉や苔盆栽は本来屋外管理を基本とし、鑑賞時だけ室内に取り込むことが理想です。
インテリアとして飾りたい場合は、たまに外に出してあげることと置き場所は直射日光の当たらない明るい場所にすることを心がけましょう。
室内であっても窓を開けて外の空気に触れさせるようにします。
水やりの見直し
水やりの際は、苔を触ってしっかり乾燥していることを確認した上でたっぷり与えるようにしましょう。
少しでも湿っているならば、まだ水やりの時ではありません。
苔はジメジメした場所を好むイメージがありますが、実は蒸れに対してとても弱い特徴を持っています。
苔が乾燥する時間と水分を吸収する時間の両方を作ることが、健康的に育てるうえで重要です。
素材の下処理と清潔な環境作り
使用する苔などに土が付着している場合は、徹底的に洗浄してから使用するようにしましょう。
苔はしっかり土を洗い流し、落ち葉やゴミなどもしっかり洗浄して清潔な状態にします。
カビ対策として炭を活用するのも効果的です。
炭には調湿作用があり、必要以上に高湿度になった場合に湿度を調整してくれます。
日常的な観察とトリミング
カビの早期発見のためには、毎日様子を観察することが大切です。
いつもと違う色合いになっていたり、元気がなかったりなどの異変があれば早めに対処してあげてください。
苔の一部が茶色くなってきたときは、茶色くなった部分を切り取って取り除きましょう。
傷んだ部分をいつまでも放置しておくとカビが発生しやすくなります。
苔を丈夫で健康に育てることが、カビを寄せ付けない最大の防御となります。
カビ菌は自然界のどこにでもいるので完全に防ぐことは難しいですが、薬剤をあらかじめ準備しておき、すぐに対処できる体制を整えておくことが重要です。
対処が早ければ、苔が枯れてしまうことなく回復させられる可能性が十分にあります。